僕は YouTube チャンネルで東大・京大入試の数学の過去問解説をしています。
そういうこともあって,東大・京大の募集要項を時折見るのですが,東大や京大は「出題の意図」という形で,各科目で問う力を明記しているんですよね。
東大・京大受験生やその保護者の方もこれを読んでいると思いますので,東大・京大の「出題の意図」を抜粋してご紹介したいと思います。
東大数学の「出題の意図」
令和 3 年度一般入試における「出題の意図」では,次のように述べられています:
以下に掲げる総合的な数学力を養うための学習をこころがけて欲しいと考えています。
1) 数学的に思考する力
問題の本質を数学的な考え方で把握・整理し,それらを数学の概念を用いて定式化する力2) 数学的に表現する力
自分の考えた道筋を他者が明確に理解できるよう,解答に至る道筋を論理的かつ簡潔に 表現する力3) 総合的な数学力
東京大学 令和3年度解答等の公表 > 出題の意図と解答 > 数学 より
数学を用いて様々な課題を解決するために,数学を自在に活用できると同時に,幅広い分野の知識・技術を統合して総合的に問題を捉える力
あなたは「数学ができる人」と聞いて,何を思い浮かべるでしょうか?
よくクイズ番組などで,難しい数学の問題という体で,実はただ面倒なだけの計算問題が出題されます。
そういうのを見たことのある人からすると,数学ができる人というのは「計算が早い人」なのではないでしょうか。
もちろん,計算が正確であったり早かったりというのは,価値のあることです。
日常生活や仕事においても,数字を使うことは山ほどありますからね。
しかし,東大が欲しがっている人材というのは,計算が速い人というよりは,上記のように数学的に思考・表現できる人なんです。
より端的にいうと,論理的思考力がある人,ということかもしれません。
徹底的に論理的に思考し,それを読み手に伝える。
東大の数学入試ではその力が問われています。
計算のスピードや正確性だけ問いたいのであれば,わざわざ記述式にする必要はありません。
マーク式にして,複雑な計算問題を大量に出題すればいいだけですから。
高校数学で学んだ計算は一通りでき,かつある程度早く,正確である。それは評価対象というより前提です。
それに加えて,論理的に思考できる力があるかどうかが重要で,実際これの有無により入試の得点は分かれます。
京大数学の「出題の意図」
では次に,京大の「出題の意図」を覗いてみましょう。
京都大学の第二次個別学力検査「数学(文系)」では,論理性,計算力,数学的な直感,数学的な表現といった数学に関する様々な基礎学力を総合的に評価することを念頭に置いて出題しています。このため論証問題はもちろんのこと,値を求める「求値問題」でも答えに至る論理的な道筋も計れるように出題しています。また証明や論理的な道筋の説明については,必要条件や十分条件に配慮した適切な表現で解答されているかどうかを見るように,出題の形式や問い方を工夫しています。なお,問題冊子に記載された注意事項を熟読していないと思われる答案があったことを注意喚起しておきます。
京都大学 令和3年度 試験問題および出題意図等 > 数学(文系) より
京都大学においても,真っ先に挙げられているのは「論理性」です。
計算力や数学的な直感が,その後に続いていますね。
それ以降の文章を読むと,やはり「論理性」を徹底的に重視していることがわかります。
「必要条件や十分条件に配慮した適切な表現で解答されているかどうかを見るように,出題の形式や問い方を工夫しています。」なんてストレートに書いてありますし,京都大学においても論理的思考力というのは重視されているわけですね。
なお,よくお読みいただいた方はわかると思いますが,これは理系ではなく文系の「出題の意図」なんです。(文系と理系で,上記文章はほぼ同じです。)
文系は理系よりも数学の学習範囲が狭いですし,勉強に割ける時間も少ないです。
ややもすれば,「とりあえず最低限の計算問題や典型問題が解ければいいや」という考えになりがち。
しかし上述の通り,文系だから論理は雑でいいなんてことはなく,文系でも論理性が重視されているんです。
東大・京大ともに「論理的思考力」が大切
東大・京大の「出題の意図」を見てきましたが,いずれも論理的思考力を重視していることがわかります。
中学校の数学までだとどうしても「計算」の側面が重視されがちなのですが,大学入試では論理というものに向き合わなければいけません。
したがって,高校数学は中学数学よりもなおさら挫折する人が多いです。
目の前の数字をいじるだけでは満点が取れませんから。
しかし,ちょっと点が取れなかったり,理解できない箇所があったりするくらいで諦めてはいけません。
というか,そこで投げ出してしまうのはもったいないです。
論理的思考力を身につければ解ける問題が圧倒的に増えますし,自信を持って答案を書けるようになります。
訓練を積み重ねれば,やがて東大・京大などの難関大入試にさえも手が届くようになるはずです。
これを読んでいる全員が東大・京大合格者レベルの数学力を身につける必要はないと思っています。
しかし,論理的思考力というのは,高校数学の学習が終わったのちの人生でもずっと役立ちます。
高校数学の学習を通じて,一生もののスキルを身につけましょう!
