今回と次回は,物理の具体的な勉強法について触れます。
学問の位置関係
学問の大まかな位置関係,というものがあると私は思います。
どの学問が優れていてどの学問が劣っている,ということではなく,たとえばどの学問からどの学問が生まれたかといったような関係です。
物理は様々な学問の中でもわりと根っこ,先祖に近い位置にあるのではないでしょうか。
世の中の様々な現象は物理的現象として数式で表現される時代になりました。
もちろん人間の感情のように数値化できない部分も存在しますが,いまや様々な現象が物理的に解析され,あるいはモデリングされています。
そういう意味で物理学は,根幹のほうにある学問といえるでしょう(もちろん,だからといって物理学が一番優れている,と言いたいわけではありません)。
たとえば運動方程式を想定してみてください。
世の中の,我々が認知できるスケールの物体はみなこれにしたがって運動しています。
運動方程式は時間に関する微分方程式なわけですが,これを解けばその物体の動きを予測できます。
物体の動きを予測できるというのはものすごく価値あることです。
たとえば明日の天気が予測できますね。未来を予測できるというのは,想像以上に素晴らしいことなのです。
そういう意味で,受験をきっかけに物理を学ぶのは意味があることだと思います。
もちろん,物理を学ばなかったところで人生で困ることは無いのですが,少なくとも大学に入って以降もちゃんと勉強を続けようと考えている理系の人にとって,物理は避けては通れない道といえるでしょう。
物理に興味がある人はもちろん熱心に勉強してほしいと思いますし,興味が無い人も,初めはイヤイヤで構わないので頑張って勉強してみてください。
公式は「覚える」べきではない
さて,詳しい勉強法の話をしましょう。
まずは公式の話です。
物理に関しては公式集の類に手を伸ばすことは禁忌といってもよいでしょう。
本当にロクなことがありません。
公式集を買ってそれを覚えるというのは,一見得点アップの近道に見えます。
実際,初めから教科書をひたすら読むよりも公式だけをパパッと覚えたほうが勉強した気分になります。
充実感だけは得られることでしょう。
しかし,充実感のほかにはなにも得られません。点数も伸びないのです。
それはなぜかというと,物理の公式はその文字列を覚えるだけでは何の意味もないからです。
それがどんな物理量についての公式で,それぞれの文字は何を意味しているのか。
その公式は何を意味していて,何を求めたいときに用いることができるのか。
これらのことが頭に入っていないと,公式は正しく理解することも利用することもできません。
ただ文字列だけが頭に入って,それで終わりになってしまいます。
運動方程式を想像してみてください。F = ma ですね。
物理を勉強したことのある人ならだれもがこの式を見たことがあるはずです。
この F や m や a が何を指しているのかが分かっていないと,この式は意味がありません。
順に力,質量,加速度ですよね。
この式の意味は,「物体に生じる加速度の大きさは,その物体にかかる力の大きさに比例する。またその比例係数は質量である。」ということになります。
逆にこの関係を理解していれば,別に力 F は小文字の f でも良いわけですし,そもそも E や G などの別の文字でも問題ないわけです。
もちろん実際は force の頭文字を取ってfにしているわけですが,f という文字が選ばれたことに(言語的な意味はあっても)物理的な意味はありません。
m や a についても全く同様です。まずはこのことをよーく理解しましょう。
公式は「覚える」ものではなく「学ぶ」ものです。
教科書や参考書で公式を見たときに,まずは登場する文字の意味を理解しましょう。
その公式に出てくる物理量を正確に把握するのです。
運動方程式でいえば「F:力,m:質量,a:加速度」となります。
次に,それらの物理量がどういう関係にあるのかを把握します。
運動方程式では,先ほど述べた通り「物体に生じる加速度の大きさは,その物体にかかる力の大きさに比例する。またその比例係数は質量である。」となります。
そして,その公式がどのように利用できるのかを自分で考えてみるのです。
今の例でいえば,たとえば「物体の質量とかかる力の大きさが分かっていれば,運動方程式を用いて加速度を求められる!」といった具合です。
物理の公式というのは理由なく存在していることはありません。
うまく利用することで必ずご利益があるからこそ教科書や参考書にも載っていますし受験でも問われのです。
物理量の把握,関係性の把握,利用価値の想像。
この一連の作業を,教科書に出てくるすべての公式について行ってみてください。
物理の理解度が劇的に良くなることと思いますし,きっと物理を学ぶのが楽しくなってくるはずです。
「図」を活用すべし
次に,「図」の話をします。
世の中の現象を解析するのか物理の役割である以上,物理の勉強をしていると様々な「図」に出会うと思います。
初歩的な段階でいえば,力の向きと大きさを図示したり,物体の運動の様子をグラフに表したりしますよね。
誰もが一度はやったことだと思います。
学習に際して,これらの「図」を大事にしてほしいのです。
教科書や参考書を読むときはそこに掲載されている図をよく眺めてください。
図というものは,ときに厳密性を欠いてしまう側面はあるものの,理解の助けとして非常に強力です。
数式を眺めているだけではわからないことが,図を見ると簡単に理解できることも多々あります。
図を見ることの利点は,記憶に残りやすいということ,そして直感的に理解できるということです。
細かい文章よりも図のほうが記憶しやすいというのは,皆さんも経験したことがあるでしょう。
視覚的に訴えかけてくるもののほうが印象に残りやすいのです。
また,文章と異なり図は直感的な理解が可能です。
物体にはたらく力の向きや物体の軌道など,言葉で説明すると難しいものでも,図にすれば一目で理解することができます。
前述の通り,厳密性に欠けるという欠点は確かに存在しますが,それを上回る長所があるのもお分かりいただけるでしょう。
物理の勉強をするにあたり,「図」に注目するとよいでしょう。
また,自分の手で図を描いてみるのも重要です。
教科書や参考書を読んでいるときに,気に入った図を書き写してみるのも良いですし,問題演習のときに積極的に図を描く努力をするのも大切です。
特に後者は,物理の実力を上げるうえで欠かせません。頭の中で理解したらハイ終わり,ではなく,どんな内容でも良いので図を描いてみると,自分の理解度を把握することができます。
分かっているつもりのことでも,いざ図にしようと思うと「あれ,力の向きって本当にこれでいいのかな?」とか「磁場の向き勘違いしてた!」というふうに,実は分かっていなかったり勘違いしたりしていることは少なくありません。
図を描く習慣をつければ,こうしたことにも確実に気づくことができます。
分野間のつながりを見ぬこう
今度は「分野間のつながり」という話をします。簡単に言うと,「異なる分野を,まったく別のものとして勉強してはいけない」ということです。
たとえば,万有引力とクーロン力は,全く同じ形の式をしています。
いずれも距離の二乗に反比例しますし,万有引力は質量の積,クーロン力は電荷の積に比例するという点も似ています。
ちなみに磁力の式も同じ形です。
このように,異なる分野の内容でも共通点というものはたくさん存在します。
他にも幾つか例を挙げると,静電ポテンシャルと重力ポテンシャルにも共通点はたくさんありますし,熱容量と静電容量も似たようなものです。
異なる分野だからといって別々に勉強してしまうと,分野を超えた知識のネットワークが形成されなくなってしまいます。
すると,わざわざ覚える必要のない内容(公式等)がただの暗記事項になってしまいます。
つながりが無いがために,一つ一つ独立したものとして覚えるしかないのです。
異なる分野での共通点を見抜き,ちゃんとネットワークを形成すれば,一見関係が無い法則も「なんだ,似たようなものじゃん」と感じられるようになり記憶の節約になるだけでなく,より深い理解にもつながります。
「共通点を見抜く」という言葉を使いましたが,これは物理に限らず科学全般で欠かせない視点です。
様々な自然現象を注意深く観測し,共通点は何かをよく考えることで,自然法則は発見できるのです。
教科書や参考書には数多くの公式が載っていますが,これらも,科学者たちが「共通点を見抜く」努力をした結果導かれてきたものです。
先ほど述べた万有引力とクーロン力,それに磁力の共通点などは,(どういうわけか)教科書や参考書にはなかなか載っていません。
そのため,日頃から積極的にそうした視点を持つのが重要です。
こういうものの見方は,是非忘れないようにしてください。
今回は以上。次回は,各分野の具体的な勉強法について述べていきます!
