今回から,物理の各分野の具体的な勉強法について,自分の考えを述べていきます。
初回は力学を対象とします。
近道に見える勉強法は,だいたい遠回り
物理を学ぶうえ何より心がけてほしいのは,「近道に見える勉強法は,実は遠回りである」ということです。
公式を覚えるだけでは無意味であると述べましたが,これなんかはまさにその例ですよね。
また,たいして教科書や参考書を読んでいないのに問題集を解き始めるのもあまり効果がありません。
物理のテストで早く点数を取れるようになりたいという気持ちはよくわかります。
点数を取るためにはとにかく問題演習をしなくちゃ,と思うのも分かります。
確かに,本を読んでいるのよりも問題演習をしているほうが勉強している気分になります
しかし,だからといって十分な勉強をしないでいきなり問題演習を始めたところで,学力はほとんど伸びないと思います。
何度も述べていることですが,公式や法則といったものはその内容や存在価値をよく理解してからでないとうまく利用できません。
意味を十分に理解していないのに公式だけを振り回そうとしても,結局上手に扱えないのです。
問題演習ばかりやるというのは,受験では一見近道に見えます。
しかし,基礎が築かれれいない状況で問題演習をしたところで,そもそも解けるはずがありません。
超簡単な基本問題ならまだしも,少し難易度が上がるだけでもう歯が立たなくなってしまいます。
まずは,教科書や参考書をよく読むことです。
これは遠回りに見えますが,長い目で見れば圧倒的な近道なのです。
しばらくの間ガマンして,ちゃんと本を読みましょう。
そうすると,基礎的な力は自然と身についてくるものです。
教科書というのは実は優れた教材です。説明が丁寧ですし,見やすい図がたくさん載っています。
公式ばかりを断片的に覚えるよりも,教科書を読んで理解を進めたほうが,知識間のネットワークが形成されやすくなり,学習効率が上がるのです。
そうはいっても,問題演習をしないと物理をやった気分にならないでしょう。
実際,問題演習をしなければ自分の理解度のチェックはできません。
教科書などを読んでその内容が頭に入った(気がした)ら,次は問題演習をします。
教科書の例題のような簡単なものから始めましょう。
いきなり難しいものからやってもなにも得をしませんから,バカバカしいようでも基本問題から取り掛かることを忘れずに。
先ほども言いましたが,たとえ簡単な問題であってもドンドン図を書くようにしましょう。
力学や電磁気学など,高校物理は(便宜上)幾つかの分野に分かれていますが,その各々について学習のポイントを説明します。
最初は力学
最初は誰しも力学の勉強をすることになると思います。
力学は,言ってみれば様々な分野の基礎ですからね。もちろん,だからといって力学が簡単なわけではないです。
力学の場合,大きく分けて二つの力が必要です。
ひとつは「見た目でセンス良く処理する力」,もうひとつは「淡々と数式で処理する力」です。
何でもかんでも見た目で処理すると,思い込みによるミスが生じてしまいますし,いつも数式に頼っていては,簡単な問題もわざわざ面倒な方法で解いてしまうことになります。
したがって,これらはいずれも必要なものであり,優劣をつけるべきものではありません。
見た目で処理する力とは,計算等をせずに「パッと見で」考察する能力のことです。
たとえば,保存力が働く空間内の閉曲線上で,物体を外力により一周させたとします。このとき外力が物体にした仕事はどれくらいかというと,ちょうどゼロになります。
もちろん閉曲線に沿って経路積分してやればゼロという計算結果が得られるのですが,保存力とはなにかを正しく理解していれば,計算をせずとも一瞬でゼロという答えを得ることができます。
このように,物理の問題の中には感覚で一瞬で処理してよいものが存在します。
そうしたものを数式で処理するのも決して悪くはないのですが,賢くないというか,時間や労力の無駄になる可能性があります。
それに,一瞬で答えを見抜くようなセンスも物理では重要です。
ですから,物理の公式などを覚えたからといってやみくもにそればかり使用するのは考え物です。
パッと見で答えを見抜く能力は,結構いろいろな場面で要求されます。
ただ,物理の問題の中には見た目だけでは処理できないものもあります。
回転座標などでの物体の運動を考えるにあたり,非慣性系なので遠心力やコリオリ力などが生じます。
そういった運動は,見た目で処理することは到底不可能ですよね。
頭がこんがらかってしまいます。私もできません。
そういう時は,物体にはたらく遠心力やコリオリ力を,数式で「淡々と」処理してやる必要があります。
イメージでは処理できないことでも,数学の力を使えば計算だけで処理できますから,正確な答えを導き出すことができるのです。
このように,力学の問題を考える際は「感覚で処理するセンス」と「数式で地道に計算する能力」の両方が必要になるのです。
個人的な印象としては,受験勉強ばかりしていると前者がおろそかになるような気がします。
問題集に載っているような問題は公式の定着を試すものばかりですから,そういった教材にばかり触れていると数式だけを駆使する脳になってしまいます。
そういった貧しい思考回路にならないために,日頃の勉強では物理的なセンスも大事にしてほしいものです。
